変わりゆく懐メロ
今日はセレモニーのお仕事がありました。
今回のリクエストは…
「人生の並木道」「夜霧のブルース」「旅姿三人男」/ディック・ミネ
「酒と泪と男と女」/河島英五
「函館の女(ひと)」/北島三郎 以上5曲です。
今日の故人さまは亡くなった私の父と同い年。
父が良く聴いていた懐メロがリクエスト曲だったので、父を思い出しました。
私が子どもの頃、NHKで放送されていた『思い出のメロディー』という番組。
当時はまだ「懐メロ」という言葉はなく、その番組によって懐メロというジャンルが確立されていったように思います。
私の父は音楽好きで、戦後間もない時代に音楽仲間とバンドを組んで活動していました。
そんな父にとって『思い出メロディー』はとても楽しみにしている番組だったのです。
番組が始まると父はテレビの前から動きませんでした😂
父が夢中になって観ているので、私も一緒に番組から流れる懐メロを聴き…
それが今の仕事に役立っています。
故人さまの趣味はカラオケ。
特にディック・ミネの曲が お気に入りだったそうです。
ディック・ミネは戦前戦後にかけて歌手・俳優として活躍した人です。
私の父もディック・ミネの曲が大好きで、懐メロの番組で彼が歌うのを聴き、昔を懐かしんでいました。
リクエストいただいた3曲はディック・ミネの代表曲です。
私は この中で「人生の並木道」が一番好きで、父と一緒に良く歌いました。
これは古賀政男による作曲で、比較的歌いやすい3拍子。
メロディーもステキですが、私は歌詞…特に3番の詞が好きでした。
…生きてゆこうよ 希望に燃えて
愛の口笛高らかに この人生の並木道
なぜ幼い私が この詞に惹かれたのか?よくわかりませんが…
生きる人への応援歌だと感じたのかもしれません。
「夜霧のブルース」もやはりディック・ミネの代表曲。
3曲の中で最も苦戦したのは「旅姿三人男」でした。
旅姿三人男 昭和14年(唄:ディックミネ)昭和45年放送より 日本歌謡チャンネル
これらの曲は古いので、ピアノの楽譜は出版されていません。
事務所から送ってきたのは、どれもカラオケ用の楽譜です😅
メロディーとコードネームさえあれば何とか弾けますが、「旅姿三人男」だけは なかなかイメージがつかめませんでした。
YouTubeを聞いたりしながら歌詞を読むと…
♫清水港の名物は〜
……あれ?これって清水の次郎長ゆかりの音楽なの?😳
ちょうど先週、清水へ遊びに行って、次郎長の生家を見てきたばかり。
調べてみると この曲は次郎長の子分の中で、人気のある3人(大政、小政、石松)を歌ったものだということでした。
戦前に作曲され、浪曲の影響もあってか、独特の節回しです。
ピアノでどこまで表現できるか…😅
ディック・ミネ以外の2曲は比較的新しいもの。
「酒と泪と男と女」は河島英五の代表曲です。
黄桜酒造のCMで使われてから、爆発的ヒットとなりました。
年代を問わず、この曲はとても人気がありますね😊
今回は どのような曲の組み立てにしようか迷いました。
古い曲は日本の陰音階が使われているので、比較的暗めの曲調です。
それで お客さまを迎えるシーンで、いつものアレに取り混ぜて演奏。
棺へのお花入れのシーンでは「酒と泪と男と女」から入り、再びディック・ミネの3曲を演奏しました。
出棺のシーンでは湿っぽくならないように北島三郎の「函館の女」で。
函館の女 『Hakodate no Hito』~ 北島三郎 【Kitajima Saburo】
この曲はアップテンポで明るくノリがいいので、油断するとノリノリになってしまいます😅
速くなりすぎないように抑えて💦
無事にお見送りできたでしょうか…?
式後、担当さんが「北島三郎しか わかりませんでした」と苦笑いされていました😅
そうですね…ディック・ミネがなくなってから30年近くが過ぎ、父世代の懐メロは今や骨董品になってしまいました。
では私たち世代の懐メロってどの曲かしら?🤔
少し前に演奏したグループサウンズ、フォークソング、それからピンクレディーなどが私たち世代の懐メロなのでしょう。
それを思うと、懐メロもずいぶんと様相が変わりました。
でも、懐メロが存在するのは、私たちより少し後の世代までだろうと思うのです。
昔は皆んなで1つのものに盛り上がることができましたが、今の世代は好みが多様化してしまいました。
娯楽の中心はテレビではなくなり、パソコンやタブレット端末で自分の好きな曲を楽しむので、他の人と音楽を共有できる機会が少なくなりつつあります。
皆んなで音楽を共有できないなら…いずれ懐メロというものは消えてしまうのかもしれません。
何だか寂しい気がするなぁ…😢
ちょっぴり複雑な思いがするのでした。
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