いつもゴキゲンでいたいから…

自分らしくあるために。ジャンルを問わず、今日を書き留めていきます。

オペラの世界

今日は昨日に引き続いてセレモニーの お仕事がありました。
今回のリクエストはオペラ。
オペラはクラシック音楽の中でもコアなファンを持つジャンルなので、通常あまりリクエストいただくことはなく…私も今回初めて お受けしました。


故人さまは まだ お若くて40代後半の男性。
声楽を専門とする方でしたが、ご家族は あまり音楽に詳しくないようです。
リクエスト曲はオペラの題名か?曲名か?ハッキリしなくて💦
「〇〇が作曲したオペラ」と言われても その人にはオペラ作品がなかったり…😅
でも、傾向としてはイタリアのベルカント・オペラが専門でいらしたのかな?と感覚で分かりました。


オペラとは音楽と演劇で構成される舞台芸術で、歌劇とも呼ばれます。
ベルカント・オペラとは、イタリアで発展した 歌の美しさが際立つオペラ。
リクエストの曲はベルカント・オペラの名曲ばかりです。
その中でもジャコモ・プッチーニの作品が多いようでした。


しかし、元がオペラの曲なので ピアノ用の楽譜がありません。
私も学生時代はオペラを歌いましたが、私が持っている楽譜は女声用しかなくて💧
担当さんと相談して、リクエストに お応えするのは 楽譜が入手可能な歌曲1曲だけにしようということになりました(ここまでが昨日の話)。


でも、同じ音楽を志した者としては、故人さまの ご希望に沿う形でありたいものです。
そこで更に楽譜を探して、なんとかプッチーニのオペラ・アリアを3曲用意。
(アリアとはオペラの中で独唱部分のこと)



さて…今回お応えさせていただいたリクエストは


「グラナダ」/アグスティン・ララ
オペラ『トスカ』より「妙なる調和」「星も光りぬ」/ジャコモ・プッチーニ
オペラ『トゥーランドット』より「誰も寝てはならぬ」/ジャコモ・プッチーニ


これに加えてイタリア古典歌曲集やカンツォーネの名曲を《いつものアレ》クラシック・バージョンに織り交ぜて演奏します。



Granada


グラナダは皆さん ご存知の通りスペインの町。
私も歌曲「グラナダ」は聴いたことがありますが…誰が作ったのか?知らなくて💦
調べたところによると、作曲者はスペイン人ではなく、メキシコ人のアグスティン・ララでした。
ララは一度もグラナダを訪れたことがなかったのですが この曲を書き、「グラナダ」は現地スペインでも大ヒット。
グラナダの名を世界に広めてくれたということで、彼は後にスペインのフランコ政権からグラナダの地に《お屋敷》を賜ったそうです😂
ちなみに この動画で歌っているのは、私の大好きなスペインのテノール歌手ホセ・カレーラス❤️



ジャコモ・プッチーニは1900年前後に活躍したベルカント・オペラの大家です。



プッチーニは数々のオペラを作曲していて、そのうち代表的なオペラ『ラ・ボエーム』『トスカ』『蝶々夫人』をプッチーニの三大オペラと呼びます。
このうち『蝶々夫人』は幕末の日本が舞台。
プッチーニは このオペラを書くにあたり、日本古来の旋律を研究して それに基づいてメロディーを作ったと言われています。
今、ヨーロッパでは日本文化が人気ですが、この時代から既にそうだったのですね😊


故人さまは『トスカ』に登場するカヴァラドッシが《当たり役》でいらしたようです。
そこで『トスカ』からカヴァラドッシの歌うアリアを2曲セレクトしました。


第1幕、画家のカヴァラドッシは教会の聖堂で壁画を描く仕事をしています。
彼には歌姫トスカという恋人がいますが、壁画のモデルとなったのは熱心に教会に通う美しい婦人。
この婦人も恋人トスカも どちらも美しい…と語るシーンで歌われるのが この「妙なる調和」



Placido Domingo sings: Recondita armonia


第3幕、カヴァラドッシは政治犯をかくまった罪で死刑判決を受けます。
死刑が執行される前夜、空を見上げ、泣きながら恋人のトスカを想いながら歌われるのが「星も光りぬ」



Plácido Domingo - Puccini: Tosca, "E lucevan le stelle" (Official Video)



加えて もう1曲、三大オペラではありませんが、プッチーニが晩年に書いたオペラ『トゥーランドット』から「誰も寝てはならぬ」



Luciano Pavarotti sings "Nessun dorma" from Turandot (The Three Tenors in Concert 1994)


このオペラの舞台は中国です。
美しい中国の姫トゥーランドットは、求婚に訪れた男性に3つの謎を解くように言い渡し、その謎が解けなかった場合は殺してしまうという冷徹な女性。
第3幕、王子カラフはトゥーランドット姫が出した謎解きを全て解き明かし、翌朝 彼女は自分のものになるだろうと歌うのが このアリアです。
トリノ五輪のフィギュアスケートで荒川静香選手が この曲に合わせて演技し、金メダルを獲得したことで広く知られるようになりました。



Shizuka Arakawa's Mesmerizing Free Program to 'Turandot' | Music Monday



プッチーニの音楽の魅力は、何と言っても美しい旋律と豪華なオーケストレーション。
歌い手は自分の声の魅力を遺憾無く発揮できるので、歌っていてすごく気持ちいいし、幸せな気分に浸ることができるのです。
私も若い頃はプッチーニのオペラに憧れ、自分も いつか舞台で歌いたいと思っていました。


しかし、残念ながら私の声質はベルカント唱法に向かなかったのです。
持ち声には恵まれましたが、私の胸格は薄く、《歌う楽器》に向かない身体でした。
それは身長に恵まれないけれどバレーボールやバスケットボールをしたい選手と同じで、身体的なハンディーがあると その道で大成するのは難しいものです。


私が大学3年の時、1つ年上にホセ・カレラスそっくりの先輩がいました。
見た目だけでなく、歌声もカレラスによく似ていて、同じように美しい高音がステキ…
少しでも彼と お近づきになりたくて、私は練習用の伴奏ピアニストとなることに成功しました🎶
でも…先輩には彼女がいたのです😅
その方は、学生ながらにして日伊コンコルソというコンクールに入賞した優秀な人でした。
報われない想いだったなぁ…と、オペラの曲を弾きながら 久しぶりに思い出しました😂
(セレモニーの仕事とは全く関係ないですね💦すみません🙈)



故人さまは盛んに演奏活動をなさっていたそうです。
今日の会場内には 故人さまが歌ってらっしゃる映像が ずっと流れていました。
お客さまは故人さまの演奏を お聴きになりたいでしょうから、私が弾くピアノと音が被ることは避けなければなりません。
どのように折り合いをつけるか…難しいところです。


しかも今日は骨葬と言って、既に故人さまは荼毘に伏されているため、お別れのシーン(棺への花入れ)はありません。
結局、用意した曲の半分くらいしか演奏の時間はなくて、プッチーニのオペラ・アリアは触りの部分だけしか演奏の機会はありませんでした。
必死の練習は生かされませんでしたが😂故人さまを偲ぶ場であるということが大事です。
それに…私も久しぶりに懐かしい曲の数々を(練習で)弾けて良かったなぁと想いました。


私が大学生だったのは もう40年も前になります。
当時の音大の仲間は、今どうしているのでしょう?
あの頃の日本は豊かで、芸術の水準も高く、海外の著名な演奏家が来日していました。
クラシック音楽は元々、貴族がパトロンとなって発展してきた芸術です。
パトロンは貴族から実業家になり、現代へとつながっていますが、今の世は芸術を経済的に支えてくれる人がいません。
芸術と芸能の区切りも曖昧になって、これからどのように変化していくのか…それを予想するのは難しいところです。


故人さまも いろいろ思うところがありながら音楽活動をされていらしたのでしょう。
会場に流れている故人さまの演奏映像は、どことなく寂しさが漂っていました。
歌われていたレパートリーもそうでしたが、なんとなく…あの憧れの先輩に似ていらっしゃったかもしれません🍀


今日も無事お見送りできて感謝でした🙏