素直に『愛でる』
今年は短い秋の後、いきなり冬が やって来ました。
寒くなると彼の地へ旅立たれる方が多くなり、セレモニーの仕事も忙しくなります。
今日も葬儀の演奏がありました。
さて、今回はリクエストは…
「Amazing Grace(アメージング・グレイス)」/聖歌
「カノン」/パッヘルベル
「主よ人の望みの喜びよ」/J.S.バッハ 以上3曲です。
このうち2曲はキリスト教を背景に持つ曲。
お式はキリスト教式?と思って事務所に確認すると…仏式の お葬式だそうです。
これって、本当に演奏していいのかしら?🤔
とりあえず会場入りしてから担当さんに訊いてみよう。
今回の故人さまは長いこと教育界で活躍され、過去に褒賞を受賞されたそうです。
このような方の お式は、ちょっと気を遣います😅
「アメージング・グレイス」はドラマやミュージカルでも良く取り上げられます。
以前にも ご紹介したように、これは讃美歌第二編167番「我をも救いし」が元の曲。
作詞はイギリス人の牧師ジョン・ニュートンです。
私が この曲を初めて聞いたのは今から40年くらい前。
ダイヤモンドの指輪のCMだったかしら?
唐沢寿明が主演をしたドラマ『白い巨塔』の劇中歌としても使われました。
穏やかな慈愛に満ちたメロディーで、とても人気があります。
パッヘルベルの「カノン」についても以前、記事にしたことがありました。
『カノン』というのは曲の形式のことで、あるテーマを形を変えながら何度も繰り返していくタイプの曲。
パッヘルベルが作曲した「カノン」は その中でも特に有名ですが、バッハや他の作曲家も「カノン」を書いています。
これはキリスト教には直接関係のない器楽曲ですが、この時代のクラシック音楽は 殆どが教会繋がりなので、響きといいキリスト教的な雰囲気ですね…
「主よ人の望みの喜びよ」はバッハが作曲した教会カンタータの中の曲で、讃美歌第二編228番「心に主イエスを」としても有名。
美しい3連符が印象的(本当は8分の9拍子)な この曲は多くの方から好かれています。
教会カンタータは礼拝用の音楽として作曲されているのだけれど…仏式の お葬式で演奏していいの?
クラシック音楽は明治時代以降、日本に入って来た音楽なので、手っ取り早く言えば《輸入もの》です。
好きな曲を流して欲しいと言われても、それが場にそぐわないこともあって…
でも私たち日本人には それが分からない場合も。
学生の時、師匠のところへ ある曲をレッスンしてもらおうとしたら、「それは男性の歌う曲だから」と言って見てくれませんでした。
知人はモーツァルトの「アヴェ ヴェルム コルプス」を結婚式に流して欲しかったのですが、その曲が お葬式用だと言われて諦めたそうです。
細かいところに こだわると難しいですね(・・;)
担当さんと話すと、「ご遺族は それほどこだわっていないようだから、構わず演奏して下さい。」とのことでした。
でも、さすがに僧侶さまが いらっしゃる場では止めておこうかな…と思います。
リクエスト 頂いた曲は、棺にお花を入れるシーンで流すことにしました。
お式は滞りなく進み、最後の お花入れのシーン。
曲の調性を考えて3曲を組み合わせて演奏していると…いつもは そのシーンに おいでにならない導師さまが会場に入って来られました。
あら…どうしようか?😅
今さら曲を変えられないし、リクエスト曲なので演奏しなければなりません。
チラッと見ると、導師さまは あまり気になさっていないような…👀
ええい、このまま弾いてしまえ!と、そのまま弾き続けました。
う〜ん…輸入もののクラシック音楽だから?
導師さまも深く気になさらなかったんですね😂
日本というのは不思議な国で、外国から入って来たものでも どんどん自分の国に合わせて作り変えていってしまいます。
カレーライス、あんぱん、照り焼きバーガー…etc
ハロウィンで大騒ぎし、クリスマスを祝い、除夜の鐘を聞いて お正月は初詣。
本当に柔軟性に富んだ国民性だなぁと思います。
今日の導師さまは40代くらい?ひょっとしたら子どもさんがいらっしゃるかもしれません。
クリスマスは今や国民的行事ですが、本当はキリストのお誕生日。
ご家庭ではクリスマスを お祝いしているのかなぁ?
あまり深く考えずにケーキを食べてプレゼント交換をしているのだろうか?
な〜んて…考えてしまったのでした🫢
音楽にも物事にも、それぞれ背景があります。
私は師匠に厳しく指導されてきたけれど…ステキな音楽は それ自体を愛でて良いのかなぁ。
時代的に、日本的に、もっとラフに考えて良いのかもしれません。
今日のリクエストは、結局どなたが ご希望になったのか分かりませんでしたが…
故人さまは愛する ご家族と、ご家族が望まれた穏やかなメロディーで静かに旅立っていかれました。
今日も無事にお見送りできて感謝でした🙏




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